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給与差押をストップするには(自己破産)

問題の所在

多重債務に陥っているときに、債権者から給与の差し押さえを受けることがあります。差押えを受けると給料の4分の1が支払われなくなりますので、生活が立ち行かなくなってしまいます。このような事態に陥ってしまった場合は、気持ちの踏ん切りをつけて、自己破産なり、個人再生なりの方法で債務整理をしなければなりません。なぜなら

自己破産、個人再生手続きの中で給与差押えをストップできる!

からです。

注意)任意整理の方法ではストップできません。

以下では、自己破産手続きの中での給与差押えストップの方法について、説明していきます。

 

給与差押をストップする方法は、自己破産手続きが①管財手続きになるか、②同時廃止手続になるかで違いがあります。要約すると、

    1. 管財手続事件の場合
      自己破産手続き開始と同時に、差押えの手続きが効力を失いますので、破産手続き開始後、すぐに給与全額を受け取ることができます。
    2. 同時廃止事件の場合
      破産手続廃止決定後に、上申することで差押えの手続きが中止されますが、免責が確定するまでの期間中は、差し押さえられた給与分は受け取ることはできません。後日、免責決定が確定すれば、給与全額を受け取ることができるとともに、差し押さえられた給与分を遡って受け取ることができます。

注意)自己破産を申し立てただけでは、差押手続きをストップさせることはできません。破産手続き開始決定が出されることが必要です。これに対して、個人再生手続では、申し立てをすることで、差押中止の申立ができます。

 

管財手続きで給与差押をストップさせる方法

 

自己破産の申立

まず、自己破産の申し立てをしますが、申し立ての段階では差押え手続きはストップしませんので、債務者としては、極力早期に次に述べる破産手続き開始決定を得る必要があります。申立書に不備があったりすると開始決定が遅れますので、申し立ては、専門家である弁護士に依頼した方が無難です。

破産手続開始決定

管財事件の場合は、自己破産手続開始決定が出されると同時に、差押えの手続きが効力を失います(破産法42条2項)。また、債権者が個別に破産者の財産を差し押さえることができなくなります(破産法42条1項)。

破産法42条

破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分・(中略)・で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2  前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分・(中略)・で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。

但し、執行裁判所には、破産宣告があったことは分かりませんので、次に述べるように、破産管財人がその橋渡しをします。

管財人による債権執行取消の上申

実務上の手続きとしては、破産管財人が、破産手続開始決定の正本を添付して、執行裁判所に債権執行取消の上申書を提出し、執行裁判所に差押の取り消しを求めます。

執行裁判所による取消決定

管財人の上申に対して、執行裁判所が、差押を取り消す旨の決定をして、給与差押は取り消されます。

※以上の手続きは、破産管財人が行いますので、債務者の方は特段の手続きをとる必要はありません。

給与の全額受領

一定期間経過後、執行裁判所から会社に、差押え取消の通知が行きます。これにより、会社から全額の給料を受領することができます。

破産手続き開始決定前に回収した強制執行

すでに、差押え手続きで回収されてしまった分については、取り戻せないのが原則ですが、申立人弁護士が受任通知を発送後申立前に強制執行された分については、例外的に破産管財人弁護士が取り戻し、破産財団に組み込みます。(債権者に配当します。)

 

同時廃止手続きで給与差押をストップさせる方法

 

自己破産の申立

まず、自己破産の申し立てをします(同時に、免責許可の申し立てをしたものと扱われます。)この段階では、まだ差押をストップさせることはできません。次の破産手続廃止決定まで待たなければなりません。ですから、申し立てを完璧にして、速やかに廃止決定が出るように、弁護士に依頼することをお勧めします。

破産手続廃止決定

同時廃止事件の場合は、自己破産宣告(破産手続廃止決定)を受けただけでは、差押の効力は失われませんが、次の執行中止の上申をすることで、差押をストップさせることができます。

破産法249条1項

免責許可の申立てがあり、かつ、第216条第1項の規定による破産手続廃止の決定・(中略)・があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行・(中略)・はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの・(中略)・は中止する。

 

執行中止の上申

実務では、強制執行(債権差押)手続の中止を求める上申書を執行裁判所に提出することで、給与差押えなどの強制執行手続きは免責が確定するまでの間、中止されます。また、添付書類は、破産手続開始同時廃止決定正本ですが、原本還付申請をして原本の還付を受けることができます。

債権差押手続中止の上申書記載例はこちら

この段階では、差押え手続きはあくまで、一時中止されるだけで、もし免責手続きの結果、免責不許可となれば、再び、差押え手続きが再開されることになります。したがって、破産者は、差押え手続きが中止されている間は、差押えにかかる給与分については受け取ることはできず、会社は差押え分の給与に支払いを保留する(あるいは供託する)ことになります。のちに述べる免責許可確定後に、破産者は給与全額を受け取ることができるようになるとともに、それまで会社に留保されていた給与を受け取ることができます。

免責許可決定確定

自己破産申し立ての際、すでに給与差押えなどの強制執行がなされていた場合、強制執行中止の上申をすることで、免責手続中は強制執行が中止されるのは上記のとおりです。そして、 免責許可の決定が確定したときに、中止した破産債権に基づく強制執行手続はその効力を失います(破産法249条2項)。

破産法249条2項

免責許可の決定が確定したときは、前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分及び破産債権に基づく財産開示手続は、その効力を失う。

 

債権差押(執行)取消の上申

そこで、免責許可決定が確定したら強制執行(債権差押)手続きの取消を求める上申書を提出することで、免責手続中の差押対象範囲の給与を受け取れることになります。添付書類は、免責許可決定書正本、および免責許可決定確定証明書正本ですが、コピーを一緒に提出すれば原本の還付を受けることができます。

債権差押取消の上申書記載例はこちら

差押命令取消決定

執行裁判所が、債権差押命令を取り消す決定をします。

給与の全額取得

取消によって、破産者は、給与全額を受け取ることができるようになるとともに、それまで会社に留保されていた給与を受け取ることができます。

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